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投稿日:2022年06月30日
/ 更新日:2023年10月06日

慰謝料全般については別の記事でも触れていますが、今回は、慰謝料のなかでも「後遺症(後遺障害)慰謝料」について、詳しく見ていきたいと思います。

後遺症(後遺障害)慰謝料とは

 交通事故によるケガを治療したものの、症状が残ってしまい、「症状固定」と診断されたものを「後遺症(後遺障害)」といいます。
 後遺症(後遺障害)慰謝料は、交通事故によって後遺症(後遺障害)を負ったことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

 後遺症(後遺障害)慰謝料の支払を受けるためには、自賠責保険会社や労災保険から後遺障害等級に認定される必要があります交通事故によるケガの症状が少なからず残ってしまうことは少なくありませんが、「後遺症(後遺障害)」が残っているだけでは、基本的に後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)の支払は受けることはできません。

 それでは、後遺症(後遺障害慰謝料)慰謝料について詳しく説明していきます。
 後遺症(後遺障害)慰謝料には、ケガした部位(自賠責保険会社に後遺障害等級を認められた部位)その部位や程度に応じた相場(後遺障害等級)があり、これをベースに交渉や裁判が進められます。

 後遺症(後遺障害)慰謝料については、自賠責基準任意保険基準裁判基準(弁護士基準)の3つの基準があります。各基準において慰謝料の金額は大きく異なります。相手方の任意保険会社から提示される金額は、自賠責基準又は任意保険基準にのっとったものとなります。弁護士に依頼していた場合には、裁判基準(弁護士基準)で算定した金額を相手方に請求することが可能で、相手の任意保険会社が算定した慰謝料額との差額分慰謝料が増額します。

後遺障害等級

 自賠責基準、任意保険基準、裁判基準(弁護士基準)のいずれも、まずは、後遺症(後遺障害)の重さ・程度を等級分けして、その等級に応じた慰謝料の基準を示しています。この等級を「後遺障害等級」といいます。労働者災害補償保険法施行規則における後遺症(後遺障害)の基準がそのまま準用されています。 

 1級から14級に分かれており、数字が低いほど、重大な後遺症(後遺障害)となります(1級が一番重く、14級が一番軽い)。
 例えば、むち打ち症の痛みが残ってしまった場合、12級または14級に該当する可能性があります。

12級 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級 局部に神経症状を残すもの

後遺障害等級についての詳細は、別記事にて説明しておりますのでご覧ください。

自賠責基準

 自賠責基準は、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金津の支払基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)によって、示されているものであり、人身事故の被害者に対して支払われるべき賠償額の最低限度の基準を政府が示したものです。
3つの基準のなかでは、最も低い金額になることがほとんどです。

任意保険基準

 各任意保険会社は、人身事故の被害者に対して提示する後遺症(後遺障害)慰謝料の金額を、自賠責基準を参考に内部で定めているようであり、これが任意保険基準といわれています。自賠責基準よりは高額であるが、後述する裁判基準(弁護士基準)よりは低額となることがほとんどのようです。

裁判基準(弁護士基準)

 交通事故の裁判例では、後遺症(後遺障害)の部位・程度に応じ自賠責基準や任意保険基準よりも高額の後遺症(後遺障害)慰謝料が認められており、この過去の裁判例の積み重ねが、裁判における後遺症(後遺障害)慰謝料の相場となっています。

 これを裁判基準(弁護士基準)といいます。

 弁護士が後遺症(後遺障害)慰謝料について交渉・裁判をする場合には、この裁判基準(弁護士基準)を用いるため、ほとんどのケースで弁護士へ依頼すれば示談樹の総額が増額できる可能性が高くなるといえるのです。

 ㈶日弁連交通事故相談センターが発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称「赤い本」、令和4年版)では、後遺症(後遺障害)の等級(1級から14級)に応じた基準が示されています。その金額は、以下の表のとおりです。

等級金額
1級2800万円
2級2400万円
3級2000万円
4級1700万円
5級1440万円
6級1220万円
7級1030万円
8級830万円
9級670万円
10級530万円
11級400万円
12級280万円
13級180万円
14級110万円



 また、下記慰謝料とは別に、後遺症による逸失利益の金額を加算し相手方に請求することができます。後遺障害による逸失利益の計算方法は、年齢や職業、交通事故前の所得額などにより異なりますが、基本的な計算式は下記の通りです。

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

具体的な金額は?

14級相当の場合

例えば、首のむち打ちによる痛みが症状固定後にも残ってしまい、14級相当の後遺症(後遺障害)であると認定された場合です。

自賠責基準では、32万円です(2020年4月1日以降の事故)。
任意保険基準では、保険会社の内部基準次第ですが、40万円程度であることが想定されます。
裁判基準(弁護士基準)では、110万円が相場となります。

12級相当の場合

同じく首のむち打ちよる痛みが症状固定後にも残ってしまい、12級相当の後遺症(後遺障害)であると認定された場合です。

自賠責基準では、94万円です(2020年4月1日以降の事故)。
任意保険基準では、保険会社の内部基準次第ですが、100万円程度であることが想定されます。
裁判基準(弁護士基準)では、290万円が相場となります。

まとめ

 交通事故に遭った際に請求できる項目のひとつである「後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)」は、部位や後遺症の程度に応じて相場(後遺障害等級)があることがわかりました。またその相場(後遺障害等級)には、自賠責基準任意保険基準裁判基準(弁護士基準)三つの基準が存在し、自賠責基準で算定した慰謝料額がもっとも低額となり、裁判基準(弁護士基準)で算定した慰謝料額がもっとも高くなります。

 また、相手方保険会社から提示された金額に不服がある場合にも、裁判基準(弁護士基準)を利用して交渉することにより慰謝料額が増額する可能性があります。

 実務上、裁判基準(弁護士基準)で算定した慰謝料額を請求するためには、弁護士に依頼することが必要です。弁護士以外の者が裁判基準(弁護士基準)を使って示談交渉することは想定されておらず、かりに弁護士以外の者が弁護士基準で算定した慰謝料額を請求しても、保険会社は対応してくれないからです。

 いかり法律事務所では、初回法律相談を無料で行っています。後遺症慰謝料(後遺障害慰謝料)について気になる方は、一度いかり法律事務所までお問合せ下さい。