投稿・コラム

投稿日:2021年04月22日
/ 更新日:2023年10月17日

頸椎捻挫とは

頸椎捻挫(むち打ち症)の病態

 頚椎とは、椎骨の一部で、頭を支えるための骨であり、頚椎捻挫の病態については、頚部(頭(頭部)と胴体をつなぐ部位、くび)に過度の屈曲(折れ曲がること)や伸展(のび広がること)が加わった結果、頚部の靭帯や筋肉といった軟部組織が完全に断裂しない程度に損傷されたと考えられています。しかしながら、その詳細は現在の医学においても正確に解明されておらず、いまだ病態は不明な部分が多いのが実情です。 

交通事故によって頸椎捻挫を負った場合、病院では基本的に以下の検査や症状の確認がなされます。 

① レントゲン検査(骨折や脱臼が認められない場合)
② 局所の痛みや頚部の可動域制限の有無運動時の痛み圧痛などの身体的所見
③ 上肢下肢の症状の有無(脊髄や神経根の障害が否定される場合)

 以上の点が確認された場合には基本的には「頸椎捻挫」と診断されることが多いと思われます。
 医師によっては「頚部挫傷」「外傷性頚部症候群」「むち打ち症」など診断名が異なる場合がありますが、基本的には交通事故の実務上ではこれらの傷病名の違いで賠償評価が変わることはほとんどありません。
 重要なのは“頸椎”を“捻挫”した結果、どのような「症状」または「後遺症」が「なぜ」残存したかという部分です。

頸椎捻挫による症状

 基本的には自覚症状が中心となるため、自分以外の他人にはわかってもらいづらいという特徴があります。
 このため、交通事故実務では被害者本人はまだ痛みがあるにもかかわらず、医師や保険会社側からすでに治っているのではないか、というようなトラブルが生じやすいという実情があります。 

一般的な症状としては下記のようなものがあります。 

疼痛(痛み)

頚部後面(首の後側):首~肩~背中にかけての痛み
頚部全面(首の前側):首筋を中心とした痛みや違和感
頭部:頭痛や頭重感

筋肉の凝り

首から肩甲骨~背中の凝り

首の可動制限、可動時痛

各方向への首の運動制限や動作時の痛み
特に後屈(首を後ろ側に倒す動作)で強い痛みを生じることが多い

その他

上肢や全身倦怠感、しびれなど

弁護士への依頼を検討すべき時期は

 一般的な捻挫の場合には多くの場合には数週間から1~2ヶ月程度で改善されることが多いとされています。
 しかし、弁護士に相談に来られる方の多くが3か月、半年以上にわたって症状が改善されていない方も少なくありません。
 
 この場合には保険会社側と適正な治療期間について主張が対立することも多く、弁護士への依頼を検討すべき時期の一つと言えます。
 そのため、頸椎捻挫と診断された方で症状が2ヶ月を経っても改善されない(改善傾向が感じられない方は特に)場合には弁護士への相談を検討した方がよいでしょう。

治療の打ち切りの妥当性について

 症状が6か月を超えても改善されない場合には、後遺症として今後も残存してしまう可能性を考慮しなければならなくなります。
 
 一般的な保険会社側の対応では、頸椎捻挫に対して6か月以上の治療を認めることは少ないといえます。
 そのため、多くの場合で5か月目までにかなり強固な治療の打ち切りを求められることが多いですが、昨今の後遺障害認定実務上6か月未満の治療では後遺障害が認定される可能性は限りなく低いのが実情です。

痛みが残存しているのに後遺症が認められない場合

 頸椎捻挫後の痛みなどの症状に対しては、自賠責保険における後遺障害として一般的に認定される等級は、14級9号または12級13号がありますが、認定割合でいえば14級9号がほとんどです。
 ただし、これ以上に「非該当(後遺障害が認定されない状態)」と判断されることの方が圧倒的に多く、被害者からすれば痛みが残存しているにも関わらず、後遺症として認められず、その補償も受けられないという非常につらい現実があります。

 多くの被害者は、後遺症が残存したにも関わらず事故から半年以上経過した時点で初めて適正な補償がなされないという現実に直面することになります。このようなことにならないためにも、交通事故に精通した弁護士に早期の段階で相談しておくことが重要です。

後遺障害の有無で賠償額は大きく変わる

後遺障害の有無や等級によって賠償金の額は大きく変わります。 
適正な後遺障害の認定を受けるためには、後遺障害認定手続に精通した弁護士に相談することが必要となります。 
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級ごとに以下の基準で算定されます。(裁判基準一部抜粋)

14級110万円
13級180万円
12級290万円
(公益財団法人 日弁連交通事故相談センター東京支部『民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準』(第49版)(大東印刷工業、2020)196頁)

まとめ

 適正な後遺障害等級を獲得するためには、交通事故による受傷後に適切な治療・検査を受け、症状固定時に充実した内容の後遺障害診断書を医師に作成してもらうことが必要です。弊所は、医療調査会社と連携することにより、高度な医学論争にも対応することができます。
 
 ただし、医師は医学の専門家ですが、後遺障害認定手続に詳しいとはいえません。 
 医学的知識をもち、自賠責の後遺障害認定手続を熟知している弁護士がサポートすることにより、後遺障害診断書の内容をチェックして適正な後遺障害等級認定を受けることができます。