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福岡市の交通事故相談に強い弁護士事務所
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投稿日:2023年10月17日
/ 更新日:2023年10月23日
目次
醜状障害とは、瘢痕や線状痕、組織陥没など体に傷跡が残ることをいい、この傷跡は交通事故から直接生じたものだけでなく、手術や事後処置のために生じた傷跡も対象となります。
本稿では、交通事故から発生した醜状障害による後遺障害等級認定の基準や申請時期、実務上の争点についてご紹介致します。
顔や体に残る傷跡(以下「醜状」といいます)には瘢痕や線状痕、組織陥没など幾つかの種類があります。
たとえば、瘢痕とは、線維組織が損傷又は病変によって破壊され、正常な組織と置き換わることをいい、線状痕とは、線状の瘢痕のことをいいます。また、組織陥没とは、欠損障害などによって組織に窪みが残った状態のことをいいます。
醜状障害(事故による場合も含む)には、外貌の醜状、上肢の露出面の醜状、下肢の露出面の醜状およびその他の部位の醜状に分類することができ、下表のとおり、外貌については障害等級第7級~第14級に、上肢・下肢については障害等級第14級に分類されることとなります。
外貌とは、頭部や顔面部、頸部のように、上肢・下肢以外の日常露出する部分のことをいいます。
後遺障害等級 | 症状 |
第7級第12号 | 外貌に「著しい」醜状を残すもの |
第9級第16号 | 外貌に「相当程度」の醜状を残すもの |
第12級第14号 | 外貌に醜状を残すもの |
第14級第10号 | ー(※) |
※ 平成23年5月2日公布の自賠責保障法施行令の改正前は、男子の外貌に醜状を残す場合には第14級第10号と扱われていましたが、男女差をつける必要性は認められないことから、改正後は、男女を問わず、外貌に醜状を残すものは第12級第14号の扱いとされることとなりました。
「著しい」醜状とは、原則として、次のいずれかに該当し、人目につく程度のものをいいます。
例えば、頭部の場合であれば、手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損のものをいい、顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没となります。 また、頸部にあっては、手のひら大以上の瘢痕のものをいいます。
なお、本稿の「手のひら」とは、被害者の手のひらのことをいいます。
「相当程度」の醜状とは、原則として、顔面部の長さ5㎝以上の線状痕があり、人目に付く程度のものをいいます。
「著しい」「相当程度」に当たらない単なる「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいいます。後遺障害等級認定の対象となる外貌の「醜状」とは、他人が醜いと感じるような、人目につく程度以上のものでなければならないとされています。
例えば、頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損、顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3㎝以上の線状痕となります。また、頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕のものをいいます。
後遺障害等級 | 症状 |
第14級第4号 第5号 | 上肢の露出面に手のひら大の醜いあとを残すもの 下肢の露出面に手のひら大の醜いあとを残すもの |
上肢の露出面とは、上腕(肩関節以下)から指先までをいい、下肢の露出面とは、大腿(股関節以下)から足の背までのことをいいます。
なお、この部位が露出する・しないについては、自賠責障害認定実務においての取扱いであり、労災基準と若干その範囲が異なることに注意が必要です(自賠責基準の方が労災基準よりも露出面の範囲は広く取り扱われているようです)。
上肢・下肢の露出面に、複数の瘢痕・線状痕がある場合、露出面の面積を合算して醜状障害の後遺障害認定が行われることとなりますが、少なくとも手のひら大以上の瘢痕・線状痕が1つ以上残っていることが必要とされています。
「日常露出しない部位」とは、胸部及び腹部、背部、臀部のことをいい、上肢や下肢は含まれません。
外貌や露出面以外の部分の醜状障害については、後遺障害等級表には定められていませんが、障害の程度により、各等級「相当」として認定されることがあります。
例えば、上記日常露出しない部位の全面積の4分の1以上に醜状が残る場合には、14級相当とされ、また、2分の1以上の範囲に醜状が残る場合には、12級相当として認定されることがあります。
醜状障害の後遺障害等級認定のための申請時期は、一般的に、受傷時から6カ月を経過した時点で症状固定(治療終了)とし、その後すぐに行うべきと考えられています。なお、縫合を行ったときは、抜糸後180日を経過した時点が症状固定時となるでしょう。
他の後遺障害事案の場合には、6カ月経過後も主治医の判断で症状固定時が先になることがありますが、醜状障害の場合には、基本的に受傷時から6カ月経過時を症状固定時とすることを検討する必要があります。
なぜなら、6カ月を過ぎて延々と醜状障害の症状固定を待っていては、本来認定されるはずであった後遺障害の等級が認定されなくなるおそれがあるからです。
先にも説明したように、醜状障害の後遺障害等級の認定には、傷の大きさについて3㎝や5㎝や10円銅貨大以上といった長さや大きさの厳格な要件を満たさなければなりませんが、傷は時間の経過とともに収縮したり、薄くなったりするものです。
傷の長さや(薄くなって)面積が足りなくなると、認定されるはずの後遺障害が認定されなくなるおそれが生じます。傷跡が数ミリ足りないといった場合には、提訴して裁判所に後遺障害を認定して貰わなければならない場合もあります。
もっとも、6カ月以上の治療期間経過後も、なお治療効果(痛みがやわらぐ等)が期待できるのであれば、症状固定時を先に延ばすことも検討するべきですので、受傷時より6カ月経過時を症状固定として後遺障害等級の認定申請をするべきか判断が難しい微妙な事案の場合には、専門医と連携できる弁護士など専門家に相談してみることがとても大切です。
醜状障害により、後遺障害が認定され、労働能力(稼得能力)の喪失が肯定されれば、この喪失率に応じて、将来得られたであろう逸失利益も肯定され、請求できる賠償額も高額なものとなる可能性がありますが、実務においては、この労働能力喪失率が大きな争点となります。醜状障害そのものが稼得能力(労働能力)の喪失について直接の影響を与えないのではないか、と考えることもできるからです。
もっとも、平成22年12月1日に公表された「外貌障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会報告書」において、外貌の醜状自体が、稼得能力(労働能力)の直接の喪失をもたらすものではないが、就業制限や職種制限、失業、職業上の適格性の喪失等の不利益をもたらし、結果として労働者の労働能力を低下させることは明らかであり、これらの不利益の特殊性にも着目した障害の評価を行うべきだし、また、外貌に障害が生じた場合には、これに伴い目や耳、鼻、口など他の器官にも障害が発生している可能性があるため、各器官の障害を含めて醜状障害を総合的に評価するのが妥当であると報告されています。
争いはありますが、実務においても、上記報告書にあるように、被害者救済の観点から醜状障害の特殊性を考慮した労働能力喪失率を肯定し、逸失利益が認められるよう必要な措置がとられるべきといえるでしょう。
なお、外ぼう障害に係る障害等級の見直しに関する専門検討会に関する厚労省のHPはこちらをご覧下さい。
醜状障害をはじめ、重大な後遺障害事案にあたっては、専門医の高度の知見や判断が不可欠です。
たとえば、醜状障害に対する立証資料は、診断書や写真だけでなく、被害者の醜状痕に関する検証が必要となります。
そのため、交通事故による後遺障害事案のご相談は、交通事故に詳しいだけでなく、専門医と連携して迅速に対応できる弁護士や法律事務所であることが大切です。
福岡の弁護士法人いかり法律事務所は、顧問医や協力医を有する福岡の医療調査会社と常時連携しながら後遺障害事案にあたっており、実際にも多数の後遺障害等級の認定を獲得しています。
醜状障害をはじめ、福岡の交通事故や後遺障害事案についての弁護士へのご相談・ご依頼は、福岡の交通事故に詳しい弁護士法人いかり法律事務所へご相談下さい。