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投稿日:2022年04月14日
/ 更新日:2023年10月13日

将来介護費とは

平均余命を基準に算定

 将来介護費とは、被害者に自賠責保険の後遺障害等級1級や2級など重度の障害が残ったため、生涯にわたって付添や看護の継続が必要になった場合に支払われる損害のことをいいます。

 将来介護費は、被害者の平均余命までの期間に実際に支出されると予想される相当額について認められます。

将来介護費が認められる条件

 将来介護費は、脳損傷脊髄損傷などにより、体の自由がほとんど利かない状態となる障害が残った場合に認められます。
 典型的には、後遺障害等級1級や2級の障害が該当します。こうした場合、近年では、具体的な障害の内容などによって判断されるため、医師の指示があればもちろん、後遺障害等級が3級以下の場合にも将来介護費が認められることがあります

将来介護費の目安

近親者が介護を行う場合

 常時介護が必要とされる場合には、将来介護費は、1日あたり8000円から9000円程度となります。
 一方、常時介護を必要としない場合には、介護の内容などに応じて上記常時介護が必要な場合の費用から減額された金額となります。 
 なお、実務上、後述するように職業介護人(介護を専門の仕事としている方)による費用よりも低額となります。 

職業介護人が介護を行う場合 

 常時介護が必要な場合及び必要としない場合ともに、原則として実費全額が認められることになります。
 後遺障害等級1級又は2級に相当する場合に、1日あたり1万5000円程度を認める裁判例もあります。もっとも、見積額が高額になる場合には、実務上、減額される傾向にあります。 

将来介護費は併用されることを想定して算定される

 当初、近親者が介護を行っていても、近親者が高齢になるに伴い、職業介護人に完全に移行するケースが多くなっています。
 また、近親者が高齢となり介護が出来なくなる前に、日中は近親者で、夜間は職業介護人に介護を任せるケースもあります。 
 このように、重度の障害により将来介護費が必要な場合、実務上、近親者と職業介護の両方の組み合わせによって将来介護費を算定する傾向にあります。ご相談を受けていても、このケースがほとんどと言ってよいような印象を受けます。 

 なお、被害者の後遺障害が高次脳機能障害など精神障害が中心であり、介護よりも声かけ・看視が主となる場合には、身体介護が中心の場合よりも介護費用は低額になる傾向にありますが、精神障害が残った被害者に自傷・他傷の危険がある場合には、身体介護が中心の場合と同等またはそれ以上の負担が介護者には伴うため、後遺障害が精神障害であることが、必ずしも将来介護費の低額事由となる要因とはなるわけではありません(千葉地判平成16年3月30日判決・自保ジャーナル1688号3頁)。

将来介護費の算定方法

 一般的な算定式として、将来介護費の日額に365日を掛けて、その後、平均余命期間の5パーセントのライプニッツ係数を掛けて算出することになります。平均余命期間は、簡易生命表厚労省ホームページ参照から確認することができます。

 また、ライプニッツ係数とは、複利計算で中間利息を控除する場合の係数のことをいいます。ライプニッツ係数には、現価表と年金現価表がありますが、現価表は、「〇年後の☓円を現在受けとる場合」に使われ、年金現価表は、「年払いで☓円を〇年間受け取る場合」に使います。

常時又は随時介護に伴う逸失利益

 近親者が介護を行う場合、介護に専念するために仕事を退職する場合があります。その場合、退職により将来得ることのできた賃金などの逸失利益についても損害額として加害者らに請求出来る場合があります。 
 かつては、間接的な損害にすぎないとして、このような逸失利益を損害と認められることは難しいとされていましたが、近年では、介護が必要な被害者の容態、介護の内容、介護期間、介護者たり得る近親者の状況、職業介護人への依存可能性の程度などを考慮して肯定されるケースが生まれています。

 たとえば、後遺障害等級1級1号の被害者を介護するため、退職した父親の逸失利益について、定年までの2年7ヵ月分の実質的近親者介護費として、1714万9303円が認められたケースがあります(東京地判平成22年2月12日・交民43巻1号165頁)。

将来介護費が肯定された裁判例

後遺障害等級1級又は2級で高額な将来介護費を認めた事例

症状固定時54歳・男性・会社員・後遺障害等級1級1号のケース

 被害者は、脳挫傷により寝たきりの状態となっており、近親者介護費として、妻が67歳になるまで日額10000円、67歳以降は職業介護費として日額20000円が認められました(神戸地判平成20年4月8日・自保ジャーナル1762号17頁)。

症状固定時7歳・女児・小学生・後遺障害等級1級1号のケース

 被害者は、脳挫傷等により四肢痙性麻痺などの状態となっており、近親者介護費及び一部職業介護費として、被害者の母が67歳になるまで日額10000円、67歳以降は被害者の平均余命まで職業介護による介護費として日額16000円が認められました(東京地判平成28年2月25日・交民49巻1号255頁)。

症状固定時25歳・男性・自営業・後遺障害等級1級のケース

 被害者は、脳挫傷等により自発運動がほとんどできない状態となっており、平均余命までの22年間のうち、最初の8年間については、近親者介護費と職業介護費を合わせて日額25000円、残りの14年間については、職業介護費として日額30000円が認められました(名古屋地判平成24年3月16日・交民45巻2号347頁)。

症状固定時67歳・女性・主婦・後遺障害等級2級のケース

 被害者は、高次脳機能障害により継続して意識障害が認められ、左半身に麻痺が残るなどの状態となっており、夫が77歳になるまでの9年間は、近親者介護費として日額6000円、その後平均余命までは、職業介護費として日額10000円が認められました(名古屋地判平成28年5月25日・交民49巻3号648頁)。

症状固定時25歳(事故時19歳)・男性・専門学校生・後遺障害等級2級のケース

 被害者は、高次脳機能障害により日常生活において随時見守りや看視が必要であるため、単独での社会生活を送ることが極めて困難な状態となっており、親族による介護費として平均余命まで日額6500円が認められました(名古屋地判平成25年2月21日・交民46巻1号277頁)。

後遺障害等級3級以下の将来介護費が認められた事例

症状固定時30歳・女性・医療事務・後遺障害等級3級3号のケース

 被害者は、高次脳機能障害により、家族による随時の声かけや見守り介護が必要な状態となっており、近親者介護費として平均余命まで日額4000円が認められました(東京地判平成25年12月25日・交民46巻6号1619頁)。

症状固定時61歳・女性・主婦・後遺障害等級併合4級のケース

 被害者は、高次機能障害により、外出時や家事を行う場合など日常生活において近親者による一定の見守りや介助が必要な状態となっており、将来において、職業付添人が必要となる蓋然性についてまでは認められないが、近親者による介護は必要となるとして平均余命まで日額3000円が認められました(大阪地判平成25年9月26日・交民46巻5号1286頁)。

症状固定時28歳・女性・アルバイト・後遺障害等級併合5級のケース

 被害者は、左上肢及び左下肢にRSD(外傷等を原因として生じた交感神経反射が、原因となる侵襲が消失しても消失せず持続し、末梢の組織に強い交感神経抗進状態を継続させ、それがより強い持続的な疼痛刺激となるという悪循環等を形成し最終的に組織の萎縮を伴うこと等を特徴とする疾病であり、外傷等の原因の程度が軽微な割に驚くほど重篤な後遺症を残す可能性がある難治性の慢性疼痛症候群のこと)を発症し、軽易な労務以外の労務に服することができない状態となっており、近親者による介護費として平均余命まで日額1000円が認められました(名古屋地判平成16年7月28日・交民37巻4号1020頁)。

症状固定時10歳・男児・小学生・後遺障害等級併合5級2号のケース

 被害者は、高次機能障害により、日常生活にも重大な障害があることから、今後一生にわたり、随時看視、声かけを要する状態となっており、近親者介護費として平均余命まで日額3000円が認められました(名古屋地判平成25年3月19日・交民46巻2号419頁)。

症状固定時46歳・男性・会社員・後遺障害等級7級4号のケース

 被害者は、CRPS(外傷又は神経損傷の後に疼痛が遷延する難治性の病態)により、右上肢による巧緻な作業をすることができず、少なくとも長距離の歩行には困難を伴っているため、日常生活を送るうえで一定の介助が必要な状態となりました。そのため、近親者介護費として平均余命まで日額3000円が認められました(横浜地判平成26年4月22日・自保ジャーナル1925号1頁)。

まとめ

 このように、将来介護費は、後遺障害等級1級や2級など重度の障害が残ったため、生涯にわたって付添や看護の継続が必要になった場合に損害額として認められることを想定していますが、1~2級のように、要介護の後遺障害等級に該当する障害がない場合にも、被害者の症状や介護の状態などにより、相場の半額程度まで将来介護費が認められるケースがありますので、ご自身の後遺障害に介護費が認められるか後遺障害事案にくわしい弁護士などの専門家に確認する必要があります。  

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