投稿・コラム

投稿日:2022年07月27日
/ 更新日:2023年10月06日

死亡逸失利益とは

死亡逸失利益とは、交通事故による死亡により得ることができなくなってしまった将来の収入のことです。
死亡による逸失利益は、

基礎収入×(100%-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

で計算します。
基礎収入、生活費控除率、就労可能年数(ライプニッツ係数)について解説をして、算定事例をご紹介します。

死亡逸失利益の基礎収入

原則 基礎収入は、事故前の収入または平均賃金をもとにするのが原則

基礎収入については、以下のページも併せてご覧ください。

サラリーマン(給与所得者)の方
自営業者の方
会社役員の方
主婦・主夫の方

18歳未満の未就労者の基礎収入

 18歳未満の方の基礎収入は、就労していないことから、平均賃金を参考に算出することになります。
 男女別全年齢平均賃金を用いる場合、【令和元年賃金センサス(男・学歴計・全年齢)平均賃金】によれば、基礎年収は560万9700円となります。

30歳未満の若年者の基礎収入

 死亡逸失利益は、将来の収入の見込みについて賠償を受けるものです。
 したがって、若年者で実際の年収が平均賃金より低い方の場合、将来的に平均賃金程度にまでは昇給するであろうという見込みのもと、低い方の実際の年収ではなく、高い方の平均賃金を基礎収入とします。その若年者の一応の基準は、30歳と言われています。
 なお、自賠責保険の支払基準では、35歳未満の被害者について現実収入によらず平均賃金を用いるものとされています。

年金収入のみの方

 老齢年金(老齢になった時に受給できる年金)・障害年金(一定の障害になった時に受給できる年金)は、判例上、逸失利益として認められます。他方、遺族年金(家族を亡くした遺族が受給できる年金)は、判例上、逸失利益として認められていません。
 ただし、就労の蓋然性が認められる場合は、死亡逸失利益が認められることもあります。

死亡逸失利益における生活費控除

 死亡逸失利益とは、交通事故による死亡により得られなくなった将来の収入のことであると説明しました。
 反面、死亡した方は、将来の生活費相当分の支出を免れるということもできることから、死亡逸失利益の計算に当たっては、この生活費相当額を控除することとなっています。その相場は、以下のとおりです。 

一家の支柱(被扶養者一人)40%
一家の支柱(被扶養者二人以上)30%
女性(主婦・独身を含む)30%
女性年少者40から45%
男性(独身・幼児を含む)50%
年金収入の方40から60%

死亡逸失利益における就労可能年齢とライプニッツ係数

原則 満67歳となるまでの期間。高齢の場合平均余命の2分の1の年数

 就労可能年数は、死亡のときから始まります。また、67歳または平均余命の1/2の年までとされています。

始期の例外-18歳未満の方

 18歳のときから開始します。ただし、大学・専門学校在学中の方や、進学見込みの方の場合、その卒業見込みの時を開始時とします。

就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 死亡逸失利益の賠償は、将来得るはずだった収入を先に一括で受けとることになるため、その期間の利息を割り引くという考え方をします。
 死亡逸失利益の計算の場面で用いられる、この利息を定型化したものをライプニッツ係数と言います。

 例えば、就労可能年数が10年の場合、ライプニッツ係数は、7.722です(令和4年現在)。
 基礎収入500万円、一家の支柱である夫(被扶養者妻のみ)、就労可能年数が10年の方の逸失利益は、3000万円ではなく、2316万6000円となります。

× 500万円×(100-40%)×10年=3000万円
〇 500万円×(100-40%)×7.722=2316万6000円

 このライプニッツ係数は、今後、民法上の利息の見直し(法律上、3年ごとに見直されることとなっています)によって変動します。

死亡逸失利益の算定例

*令和2年4月1日以降に発生した事故に関するライプニッツ係数にて算出

事故時40歳の男性(会社員)、年収600万円、妻と子供ありの場合の死亡逸失利益の算定例

死亡による逸失利益は、7697万3400円となります。  
計算式は、年収600万円×(1-30%)×18.3270=7697万3400円

事故時8歳の男子の死亡逸失利益の算定例(18歳未満の未就労者の場合)

死亡による逸失利益は、5322万3711円となります。
基礎収入については賃金センサス全年齢平均賃金額とすることになります。

 560万9700円【令和元年賃金センサス(男・学歴計・全年齢)平均賃金】×(1ー生活費控除率50%)×18.9756(事故時から67歳までの係数ー18歳に達するまでの係数)=5322万3711円 

59年(8~67歳)に対応する係数=27.5058 10年(8~18歳)に対応する係数=8.5302 

その他の死亡逸失利益の金額を知りたい方は、是非、初回無料法律相談をご利用ください。

福岡における交通事故による死者数

令和2年には、死亡事故発生件数は91件で、91人の死者が出ています。
死者は24歳以下が8名(0~4歳が2名、15~19歳が6名)、25~64歳が30名、65歳以上が53名となっています。
男女別の内訳では、男性47名、女性44名でした。
事故類型別では、人対車両で41名、車両相互29名、車両単独16名、踏切列車事故5名となっています。
その他、福岡県警察が公表している交通事故統計資料をご参照ください。

福岡県内での交通死亡事故で裁判をするときの管轄

 福岡県内で裁判をするときはその管轄に応じて、以下の裁判所のいずれかに提訴をすることになります。管轄区域一覧はこちら(福岡地方裁判所関係の管轄一覧)
 
 福岡地方裁判所本庁、福岡地方裁判所小倉支部、福岡地方裁判所久留米支部、福岡地方裁判所飯塚支部、福岡地方裁判所田川支部、福岡地方裁判所直方支部、福岡地方裁判所柳川支部、福岡地方裁判所行橋支部、福岡地方裁判所大牟田支部、福岡地方裁判所八女支部があります。これらどの裁判所で訴訟をするときでも、すべて対応可能です。
 
 また、ここ近年は、裁判のIT化が進んで、ほとんどの裁判期日はWEB会議又は電話会議の方法で開催されるようになったことから、福岡県外の死亡交通事故でも訴訟対応可能です。