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投稿日:2022年07月22日
/ 更新日:2023年10月06日

弁護士費用保険特約とは

 弁護士費用保険特約とは、「弁護士費用等補償特約」や「弁護士費用等担保特約」とも呼ばれますが、被保険者が交通事故によって被った損害について弁護士に相談した場合の法律相談料や弁護士に依頼して発生した着手金、報酬金等弁護士費用、訴訟費用等について一定の範囲内(通常1事故につき300万円が限度)で保険金が支払われる特約のことをいいます。 

 各保険会社の約款により内容は異なり、弁護士以外にも司法書士や行政書士に手続きを委任した場合の費用を補償するものもありますので、特約の利用の際には、附帯した特約の内容が弁護士費用を補償したものであるか予め確認しておく必要があります。

 なお、人身傷害保険無保険者傷害保険について、ご自身の加入している保険会社に請求する場合は損害賠償請求ではないので特約は適用されません。 

東京海上日動の弁護士費用保険特約

弁護士費用保険特約(弁特)の種類

 東京海上日動火災保険株式会社(以下、「東京海上日動」といいます。)の弁護士費用保険特約は、①日常生活で起きた事故や、②自動車事故の相手方に法律上の損害賠償請求をする場合などに発生する弁護士費用や法律相談料を補償する保険です。 
 
 日常生活で起きた事故とは、たとえば、歩行中に自転車とぶつかって怪我をした場合や、バッグを突然ひったくられて転倒して怪我をした場合、居住しているマンションの上階で水漏れが発生し、部屋のPCなどが壊れた場合などが挙げられます。

 東京海上の弁特は、日常生活を送る上で起きた事故により発生した損害(弁護士費用)と自動車事故により発生した損害(弁護士費用)を補償する「日常生活・自動車事故型」と自動車事故により発生した損害(弁護士費用)のみを補償する「自動車事故型」2種類があります。
 これら日常生活・自動車事故型と自動車事故型は、いずれか一方を選択することができます(東京海上のHP参照)。 

東京海上日動の弁護士費用保険特約の内容

対象事故

 東京海上日動の弁護士費用保険特約は、被保険者が対象事故によって被った被害について、損害賠償請求を行う場合に発生した弁護士費用を負担します。

 補償内容となる対象事故とは、①被保険者又は賠償義務者が自動車又は原動機付自転車を所有、使用又は管理することによって生じた事故や、②自動車又は原動機付自転車の運行中に生じた飛来、落下物との衝突や火災、爆発などが想定されています。

 また、自転車との衝突により怪我をした場合には、日常生活における急激かつ偶然な外来の事故として、「日常生活・自動車事故型」の弁特の補償内容となっていますが、「自動車事故型」の弁特の補償内容とはなっていません。具体的な補償範囲については、直接、東京海上日動や保険の代理店に確認することが必要です。

利用方法

 弁護士費用保険特約を利用する場合には、利用する前に、予め保険会社に連絡し弁護士費用保険特約の利用について同意を得ておかなければなりません

適用範囲

被保険者

 被保険者とは、弁護士費用保険特約による補償の対象となる者のことをいいます。また、記名被保険者とは、東京海上日動と弁護士費用保険特約について保険契約を締結した者をいいます。被保険者と記名被保険者、保険金請求権者の範囲は、必ずしも一致するわけではありません。

 東京海上日動の弁護士費用保険特約により補償対象となる者(被保険者)は、記名被保険者のほか、記名被保険者の配偶者、記名被保険者又はその配偶者の同居の親族(たとえば記名被保険者及びその配偶者と同居している子など)、記名被保険者又はその配偶者の別居の未婚の子(たとえば地方から都内の大学に通うため、都内で一人暮らしをしている子)などが含まれます

 また、上記のように、被保険者と親族関係にない第三者であっても、たとえば契約している被保険者の車に搭乗している間に事故に遭った者や、上記被保険者らが契約していない車(たとえばレンタカーなど)を被保険者ら運転している時に事故に遭った者も、弁護士費用保険特約によって補償される被保険者とされています。 

保険金請求権者

 保険金請求権者とは、弁護士に相談・依頼することにより発生した費用(法律相談料や弁護士費用)を弁護士費由保険特約の保険者(以下、「弁特社」といいます。)である東京海上日動に請求することができる者をいいます。

 保険金請求権者は、被保険者の範囲とほとんど重複しますが、被保険者が事故により亡くなった場合等は、その法定相続人が保険金請求権者となるため、被保険者よりもその範囲は広くなります。

 保険金請求権者は、弁特社である東京海上日動と保険契約を締結していなくても、補償の範囲に含まれる可能性があるという点が特徴となります。

保険金・保険料について

保険金

 東京海上日動から支払われる法律相談料や弁護士費用にかかる保険金の額は、1回の対象事故について、被保険者1名あたり合計で300万円が上限とされています。通常、弁護士費用保険特約を利用しても、その後保険料の負担が大きくなったり、保険の等級が下がるなどの影響もないため、弁護士に相談・依頼する場合には安心して利用することができます。

保険料

 東京海上日動の弁護士費用保険特約の保険料は、運転される方の範囲や年齢免許証の種類(色)ご契約の車の使用目的通勤用・業務用・レジャー用など)などによって決まります。また、ご契約の車を運転される方を、記名被保険者のみ又は記名被保険者とその配偶者のみに限定することなどにより、保険料が割安になります。

 保険料は契約者個々人の属性により異なりますので、ご自身の保険料がいくらになるのか、詳しくは東京海上日動や保険代理店に確認してみるとよいでしょう。

保険金が支払われない場合

 事故の発生について、保険金請求権者に故意・重過失がある場合など、保険金請求権者に帰責性がある場合には、対象事故が発生したとしても、保険金が支払われません

故意又は重過失が認められる場合

 
 たとえば、違法な薬物を服用して運転した結果発生した事故や、飲酒運転による事故、闘争行為や犯罪行為、自殺行為などにより発生した事故、競技や曲技のため契約車以外の車を運転し発生した事故などが挙げられます。
 
 保険事故と認められるためには、対象となる事故が、急激かつ偶然な外来の事故(突発的に発生し、予見することが困難な出来事であって、被保険者の身体の外部から生じた事故)」であることが必要とされるため、故意・重過失により、自ら保険事故を発生させた場合には、急激かつ偶然な外来の事故とは認められず保険金は支払われません

不可抗力と認められる場合

 
 たとえば、地震や噴火、津波により発生した事故や、戦争、外国の武力行使、内乱、暴動などにより発生した事故などが挙げられます。
 
 これらは「急激かつ偶然な外来の事故」にあたるといえますが、これら不可抗力といえるような事由により発生した事故については、保険金は支払われません。通常、自動車の運転により発生する事故として想定されていないからであると考えられます。

賠償義務者が親族である場合

 
 たとえば、交通事故により発生した損害賠償義務を負う者が、被保険者の配偶者であったり、被保険者の父母又は子である場合などには、事故による保険金は支払われません。

 この場合、保険金請求権者と賠償義務者との間に経済的一体性が認められ、請求権者に保険金を支払ったとしても、最終的には賠償義務者に求償することになり、請求権者に保険金を支払う意義が乏しいからであると考えられます。

 その他、保険金が支払われない場合について、東京海上日動の契約のしおり(約款)に規定されています。

東京海上日動を選ぶメリット

認知度が高く補償内容も手厚い

 東京海上日動は、弁護士費用保険特約を販売している保険会社としてはとても人気があり、実際に、東京海上日動の弁護士費用保険特約を利用して弁護士にご相談、ご依頼する方も沢山いらっしゃいます。東京海上日動の弁護士費用保険特約は認知度だけでなく、利用者の人気も高いといえます。

 東京海上日動は、LAC基準を定めた日弁連と協定していない非協定保険会社ですが、弁護士費用保険特約の補償内容は、他の保険会社と比べても劣るものではなく、他の保険会社と同等か又はそれ以上に手厚い補償内容となっています。

弁護士費用のトラブルが少ない

 LAC基準を定めた日弁連と協定している協定保険会社に弁護士費用を請求する場合、事実上、LAC基準に沿った費用の請求をすることが求められます。仮にLAC基準以上の弁護士費用を請求しても、日弁連と協定した保険会社は、LAC基準で定めた額以上の費用を支払うことは通常ありません

 LAC基準を超えた弁護士費用が保険会社から支払われない場合、弁護士や法律事務所は、本来の弁護士費用とLAC基準で算定された弁護士費用との差額を依頼者に請求することがあります
 通常、依頼者は、自身の加入した保険会社が弁護士費用を支払ってくれるものと考えています。そのため、事件が全て解決し安堵しているところに弁護士費用を請求されると、困惑し、ときに保険会社との間で弁護士費用の支払の可否についてトラブルが発生します

 他方、東京海上日動は日弁連と協定していない非協定保険会社ですが、東京海上日動に対して、LAC基準以上の弁護士費用を請求しても、約款で定められた範囲内であるなら、ほとんど揉めることなく弁護士費用が支払われます。
 その上、東京海上日動は、弁護士費用の最低保証額が協定保険会社よりも高額であるため、弁護士費用を請求して揉めることはまずありません。
 
 このように、東京海上日動の弁護士費用保険特約の特徴は、弁護士費用の請求に際して事件終了後のトラブルの発生が少ない点が挙げられます。
 ちなみに、LAC基準を盾に弁護士報酬を限界まで抑えようとする損○ジャパンやSB○損保とは弁護士報酬でよく揉めます(SB○証券の方はとても優秀なんですがね)。 

まとめ

 現在、補償内容も手厚く、手頃な価格で弁護士費用保険特約をオプションとして販売している保険会社はたくさんあります。
 しかし、どの保険会社も補償内容、保険料などに大きな差はなく、選択する側にはどの保険会社の弁護士費用保険特約を附帯すればよいのか、分からないことが多いのではないでしょうか。
 
 補償内容に大きな差異がないのであるならば、弁護士費用についてトラブルの発生のおそれが少ない保険会社を選ぶ方が合理的です。
 本稿では、東京海上日動の弁護士費用保険特約について紹介しましたが、東京海上日動と同じように、日新火災海上保険株式会社イーデザイン損害保険株式会社の弁護士費用保険特約も、弁護士費用の最低保証額が高額に設定されているため、弁護士費用についてのトラブルの発生は少ないと考えられます。

 弁護士費用保険特約の附帯を検討しているのであれば、保険料や補償内容だけでなく、弁護士費用に関する各保険会社の対応も考慮に入れた上で特約を附けることをおすすめします。