投稿・コラム

投稿日:2022年05月10日
/ 更新日:2023年10月12日

慰謝料全般については、別の記事でも触れていますが、今回は、慰謝料のなかでも「傷害慰謝料」について詳しく見ていきたいと思います。

傷害慰謝料とは

傷害慰謝料は、交通事故に遭った後、治療期間終了までの痛みなどによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
この傷害慰謝料については、自賠責基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)の3つの基準があると言われています。

自賠責基準

自賠責基準は、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金津の支払基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)によって示されているものであり、人身事故の被害者に対して支払われるべき賠償額の最低限度の基準を政府が示したものです。
つの基準のなかでは、最も低い金額になることがほとんどです。

任意保険基準

各任意保険会社は、人身事故の被害者に対して提示する傷害慰謝料の金額を、自賠責基準を参考に内部で定めているようであり、これが任意保険基準といわれています。
自賠責基準よりは高額であるが、後述する裁判基準(弁護士基準)よりは低額となることがほとんどのようです。

裁判基準(弁護士基準)

交通事故の裁判例では、入院・通院の期間をもとに算出した自賠責基準や任意保険基準よりも高額の傷害慰謝料が認められており、この過去の裁判例の積み重ねが裁判における傷害慰謝料の相場となっています。
これを裁判基準(弁護士基準)といいます。
弁護士が傷害慰謝料について交渉・裁判をする場合には、これを基準とするため、ほとんどのケースで弁護士へ依頼したら増額できる可能性が高いといえるのです。

㈶日弁連交通事故相談センターが発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償算定基準」(通称「赤い本」・令和4年版)では、傷害の程度に応じて、二種類の基準が示されています。

表1 出血・骨折・臓器損傷等があった場合の基準(単位:万円)

入院1月2月3月4月5月6月7月
通院053101145184217244266
1月2877122162199228252274
2月5298139177210236260281
3月73115154188218244267287
4月90130165196226251273292
5月105141173204233257278296
6月116149181211239262282300
7月124157188217244266286304

表2 軽い打撲・捻挫、むち打ち等だった場合の基準(単位:万円)

入院1月2月3月4月5月6月7月
通院0356692116135152165
1月195283106128145160171
2月366997118138153166177
3月5383109128146159172181
4月6795119136152165176185
5月79105127142158169180187
6月89113133148162173182188
7月97119139152166175183189

具体的な金額は?

骨折を伴うけがにより、入院1か月(30日間)、その後週に2回程度の3か月間(実日数24日)病院に通った方の場合

自賠責基準では、45万3600円です(2020年4月1日以降の事故)。
任意保険基準では、保険会社の内部基準次第ですが、60万円程度であることが想定されます。
裁判基準(弁護士基準)では、表1の入院1か月、通院3か月が交差する115万円が相場となります。

むちうちにより、週に2回程度4か月半(実日数36日)病院に通った方の場合

自賠責基準では、30万2400円です(2020年4月1日以降の事故)。
任意保険基準では、保険会社の内部基準次第ですが、52万円程度であることが想定されます。
裁判基準(弁護士基準)では、表1の通院4か月と通院5か月の間の73万円が相場となります。

慰謝料に影響を与える事項

入院・通院の期間や日数以外にも、慰謝料に影響を与える要素があります。
例えば、ケガの程度が命にかかわるような重篤なもので、一命をとりとめたというような場合、慰謝料を増額する要素といえるでしょう。
また、通院の期間が長いけれども、その頻度が月1回程度と少ない場合、その頻度が低い理由によっては、慰謝料を減額する要素として考慮される場合もあります。

この点は、別記事にまとめたいと思います。

まとめ

傷害慰謝料については、入院・通院の期間や日数に応じて相場があり、その相場は、自賠責基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)の3つの基準があります。ほとんどのケースで、弁護士へ依頼したら増額できる可能性が高いといえます。