投稿・コラム

投稿日:2023年08月07日
/ 更新日:2023年09月15日

はじめに

交通事故の発生件数は減少している

 警察庁交通局発表の「令和4年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」によると、令和4年の交通事故件数は300,839件(うち死亡事故件数は2,550件)となっており、10年前の平成25年の交通事故件数が573,842件(うち死亡事故件数は4,388件)から約48%減大幅に減少していることが分かります(参考:e-stat「令和4年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」)。

減少の理由

 死亡事故を含め、交通事故の発生件数が大幅に減少している理由は、道路交通環境の整備や交通安全思想の普及徹底安全運転の確保車両の安全性の確保道路交通秩序の維持救助・救急体制等の整備等が進められてきたことが考えられます。
 その他、利用者人口の減少などの社会的・経済的事情、自動車やバイクへの関心が以前よりも薄れてきたことなども事情として挙げられるでしょう。

バイク事故の件数も減少傾向にある

 警察庁交通局発表の「令和4年中の交通事故の発生状況」によると、令和4年のバイク事故(自動二輪車及び原付自転車)の発生件数が38,945件(うち死亡事故件数は435件)であるの対し、10年前の平成25年のバイク事故の件数が90,215件(うち死亡事故件数は761件)となっていることから約57%減と、交通事故発生件数の総数の減少に伴い、こちらも大幅な減少が認められます(参考:e-stat「令和4年中の交通事故の発生状況」)。

 このように、近年バイク事故の発生件数は減少傾向にありますが、後述のとおり、バイク事故の特徴から自動車事故より被害が大きくなる傾向にあることが分かります。本稿では、バイク事故における特有の事情についてその概要とバイク事故を弁護士へ相談することの有意性などについてご紹介致します。

バイク事故の特徴

構造上負傷に繋がりやすい

 自動二輪車も「自動車」であり(道交法2条1号8号)、自動二輪車を運転する場合に運転者に課せられる基本的な交通規制は、四輪車と異なるところはありません。原付自転車においても、遵守する規制も同様です。以下、説明の便宜のため、原付自転車及び自動二輪車を単に「バイク」と呼びます。 

 もっとも、バイクは運転者が自らバランスをとって運転しなければならず、停止すれば安定を失うというバイクの構造上、自動車とは異なる運転技術が必要とされます。また、バイク事故の大きな特徴とも言えますが、バイクを運転する場合には、運転者や同乗者が外にむき出しの状態となっているため、ひとたび事故が起きると重傷を負うことも多く、自動車事故以上に死亡事故につながりやすいといえます。
 
 その他、他の自動車との衝突事故だけでなく、2輪車という構造上、単独走行中であっても外部の環境から、バランスを崩して転倒、負傷することもあります。他の車両と接触しなくても、負傷する可能性がより大きいこともバイク事故の特徴として挙げられます。

死傷事故に繋がりやすい

 警察庁交通局発表の「令和4年中の交通事故の発生状況」の「表2-4-2 損傷主部位別・状態別死傷者数」によると、死亡事案では自動車事故の場合、胸部の負傷が致命傷となって死亡に至るケースが最も多いの対し、バイク事故の場合では、頭部の負傷が致命傷となって死亡するケースが最も多いことが分かります。
 
 先に述べたように、バイク事故が自動車事故と比べて死傷事故に繋がりやすいのは、自動車とは異なる運転技術が必要とされ、乗車中はヘルメットやジャケット以外に頭部や胸部など体の枢要部を守るものが少ないことが大きな原因になっているものと考えられます。

バイク事故における損害

 バイク事故においても、バイクの損害評価(以下「物損」といいます)の諸問題については、基本的に自動車事故の物損の場合と異なるところはありません。

修理費用

 バイク事故についても自動車事故と同じように、修理費用が損害の一部となりますが、加害者側保険会社のアジャスター(※)と修理工場と間で修理費用の協定交渉行われ、加害者側と協定が成立している場合には、修理費用の金額について争いが起きることは余りありません。
 ※「アジャスター」とは、社団法人日本損害保険協会に加盟する保険会社の「保険事故」の損害調査業務を行なう者のことをいいます。 

 もっとも、バイクの場合、自賠責保険とは異なり、加入が必須ではないことや保険料負担との兼ね合いから、バイクの車両保険の加入率は極めて低いのが現状です。「自動車保険の概況2022年度(損害保険料率算出機構発行)」の「くるまに関する保険関連の統計」によれば、バイクの車両保険の普及率は2.1%(前年1.8%)となっています。
 
 このように、協定修理費用が定まっていない場合には、修理費用の相当性・妥当性について見積書などの証拠書類を集めるなどして立証活動を行う必要がありますが、専門的な知識や経験なく、これらの立証活動を行うことは決して容易ではありません。物心両面の負担を考えると、修理費の立証活動については、交通事故に強い弁護士など専門家に立証活動を依頼する方がかえって合理的といえるでしょう。

車両価格の評価

 バイクが「経済的全損」となった場合には、損傷したバイクの事故当時の価格を認定する必要があります。経済的全損とは、修理費用がバイクの時価額に買替諸経費を加えた金額を上回ることをいいます。要するに、修理するよりも買い替えた方が安くなる状態のことをいいます。
 
 バイクの車両価格を評価する際は、ネット上の中古車情報を踏まえて、当該バイクの車種年式走行距離など諸要素を考慮して評価することになりますが、バイク特有の事情(モデルチェンジの周期や限定生産による希少性など)もあるため、適切な損害額の立証が難しい場合があります
 適正・妥当なバイクの車両価格の評価を行うためには、バイク事故に詳しい(バイク好きの)弁護士など専門家に確認してみることが大切です。

改造(カスタム)費の評価

 バイク事故の場合においても、相手に請求することができるのは、事故との相当因果関係がある損害に限られます
 実務上、バイクの改造費は、事故との相当因果関係が認められる扱いとなっていますが、違法な改造や当該改造によって損害を拡大したと認められるような場合には、損害の公平な分担という観点より、過失相殺され損害額が減額ないし免責されることがあります。

 過失の認定が争われる場合、過失を基礎づける具体的な事実の認定などが必要となりますが、これらの認定には高度な法的判断が不可欠となります。過失の争いが懸念される場合は、バイク事故に詳しく、事実認定の専門家である弁護士に相談してみることが必要といえるでしょう。

買替諸費用

 事故によってバイクの買換えが必要となる場合、移転登録手数料バイクディーラー(新車や中古車の小売業者)の報酬相当額は、自動車と同様にバイク事故の損害として認められます。

 もっとも、自動車事故の場合と異なり、バイク事故の場合には、車庫証明費用や自動車取得税、廃車費用は損害として認められていません
 また、車検費用については、250cc以下のバイクは車検が不要であるため損害として認められません。
 バイクの買い替えにあたり、請求可能な費用について気になることがあれば、まずはバイク事故に詳しい弁護士など専門家に相談、確認してみることが大切です。

その他の損害

 上記に挙げた損害の他、バイク事故に伴う損害として、修理、買替期間中に代車を使用した場合の代車費用や営業用で使用していたバイクが損傷したため将来得られたであろう利益である休車損害、事故によりバイクの価額評価が低下したことによる損害である評価損ヘルメットジャケット等の損傷などが損害として想定されます。
 
 個別の事案によってこれらの損害が認められることがあるので、バイク事故に関する損害の種類・範囲について気になることがあれば、まずはバイク事故に詳しい弁護士に相談してみましょう。

バイク事故の過失割合の評価

 バイク事故の過失割合についても、自動車の交通事故の場合と同じように、基本的に「別冊判例タイムズ38号(民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準全訂5版)」を利用して過失割合の評価を行います。
 もっとも、上記判例タイムズにおいてもすべての過失の態様が網羅されているわけではなく、あくまでも類型的又は定型的な過失の態様が掲載されているに過ぎません。
 
 また、バイク事故の場合、自動車事故の場合と異なり、走行中の態様・状況が多種多様であり、過失割合の評価にあたって考慮すべき事情が多いため、過失割合を一様に評価することは難しいのが実情です。
 
 過失の評価は、過失を基礎付ける具体的事実の認定や事故当事者の注意義務違反の有無・程度など様々な法的判断が必要となります。
 バイク事故の過失割合にかかる評価は、自動車事故とは異なる特有の事情を考慮する必要があるため、過失割合の判断にあたっては、警察や相手の保険会社の言い分を鵜呑みにするのではなく、弁護士などの専門家に確認してみることが大切です。

まとめ

 本稿で述べたように、バイク事故には、損害の範囲や過失割合などについてバイク事故特有の考慮事情があります。
 バイク事故の特有の事情を適切に考慮し、正当な損害賠償請求を行うためには、交通事故(バイク事故)に詳しい弁護士などの専門家に相談してみることが大切です。
 バイク事故について少しでも気になることや、バイク事故について福岡で弁護士をお探しの方は、バイク事故に詳しい弁護士法人いかり法律事務所にぜひご相談下さい。