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投稿日:2023年09月28日
/ 更新日:2023年09月29日

バイク事故の保険

 損害保険料算出機構が発表している「自動車保険概況」にあるバイクの保険加入率を見ると、2022年3月時点で、自家用普通乗用車における対人賠償の(任意保険の)保険加入率が83.3%(対物賠償は83.2%)であるのに対し、バイク(原付を除く)の対人賠償の保険加入率は、45.9%(対物賠償は46.9%)とかなり低い加入率であることが分かります。
 
 バイク保険の加入率が低い要因は、若者の事故発生率が高く、保険料が高額となりがちであること等が挙げられますが、一度事故が発生すれば、バイクの場合、自分だけでなく怪我をさせた相手も重症化する傾向にあることから、とりわけ対人賠償責任への保険加入の必要性は高いものといえます。
 
 加入率の低いバイク保険ですが、保険料が高くとも、加入の必要性があることは先に述べた通りです。
 では、バイク保険に加入するとすればどのような保険に加入すればよいのか、本稿では、バイクによる交通事故を取り扱う法律実務の観点から、補償の内容や必要な保険、おすすめの保険・特約などについてご紹介致します。

バイクの保険の内容

 各保険会社が提供するバイク事故に関する代表的な補償の内容として、以下の3つの補償が挙げられます。
 内容は、自動車保険と基本的に同様であり、各保険会社により補償される金額は異なりますが、各保険会社の約款を概観する限り大きな差異はないというのが印象です。
 以下、基本的な補償内となる賠償被保険者自身バイクの各補償について、その概要をご紹介致します。

賠償に関する補償

 賠償に関する補償とは、要するに、バイクを運転して、他人を怪我させたり、他人の物を壊してしまった場合に、加入している保険会社より保険金が支払われることをいいます。

対人賠償責任保険とは

 「対人」とあることからも分かるように、対人賠償責任保険とは、バイクを運転して他人を怪我させてしまった場合に保険金が支払われる保険のことをいいます。

対物賠償責任保険とは

 こちらも「対物」とあることから分かるように、対物賠償責任保険とは、バイクを運転して他人の物を壊してしまった場合に保険金が支払われる保険のことをいいます。

保険会社による示談交渉

 上記の対人・対物責任保険の補償内容には、怪我をさせた又は物を壊してしまった被害者である他人との示談交渉が含まれている場合があります。保険に詳しくない被保険者に比べれば、保険会社には豊富な経験・知識があり、(保険会社も営利法人ですし)支払う保険金を出来る限り少なくするために、熱心に示談交渉を行ってくれることが期待できます。
 
 ただし、示談交渉については、弁護士に頼んだ方が、訴訟となるリスクも抑えられ、また、より低額で示談となることが期待できます。

被保険者自身の補償

人身傷害保険とは

 被保険者自身の補償として人身傷害保険があります。
 この人身傷害保険とは、バイクに乗車して怪我をした場合の治療費や休業損害(仕事を休んで減収となった場合の補償)、死亡による逸失利益(生きていたら得られたであろう収入)、精神的損害など様々な費用・損害額を補償するものをいいます。
 
 補償される保険金額は、自ら設定する場合や予め設定されている場合があり、自ら設定する場合には、一般的に、被保険者の年齢や被扶養者の有無などにより決定することになります。

人身傷害保険が役に立つ場面

 先に述べたように、人身傷害保険は、バイクに乗車して被保険者が怪我・死亡した場合に、自らの加入する保険会社より支払われる保険です。
 交通事故の被害者となる場合で、加害者(加害者加入の保険会社)から十分な保険金が支払われ、損害が補填されるのであれば、例え損害を被っても人身傷害保険を利用する必要はありません。 

 人身傷害保険により補償が必要となるのは、加害者が保険会社に加入しておらず、賠償額を補填するだけの資力がない場合や、過失に争いがあり、交通事故の相手当事者が保険を利用することを拒絶している場合などが挙げられます。
 実務においても、事故の相手が無保険である場合や相手が加入している保険の利用を拒絶している場合に、被害者の人身傷害保険を利用して、治療を受けてもらうことになります。
 
 なお、人身傷害保険を利用後、最終的に相手に対する賠償額が認められた場合には、保険会社は人身傷害保険の利用により支払った費用を相手に対して求償することになります。

バイクの補償

 バイクの補償として車両保険があります。車両保険とは、交通事故により乗車したバイクが壊れた場合や故障した場合に、その修理費を補償するものをいいます。(物理的又は経済的)全損の場合に、バイクの再調達に要する諸費用については、この車両保険の補償範囲に含まれていないことが一般的であり、全損の補償には、別途特約の付帯が必要になることがあるので注意が必要です。
 なお、経済的全損とは、修理する方が買い換えるよりも高くつくことをいいます。

補償を充実させる様々な特約

特約は必要か

 自動車保険と同じように、バイクの保険にも各種の補償を充実させるための多くの特約があります(各保険会社とも呼称は異なっても内容は大体似たり寄ったりです)。
 たとえば、東京海上日動のバイク保険のパンフレットには「無過失事故に関する特約」や「臨時代替自動車補償特約」「他車運転危険補償特約」「搭乗者傷害特約」「自損事故傷害特約」「無保険車事故傷害特約」「ファミリーバイク特約」「個人賠償責任補償特約」など多くの特約が紹介されています。
 いずれの特約も補償内容を充実させるものとして、付帯させたくなるものばかりですが、ことバイクによる交通事故の補償に関していえば、一部の特約を除いて特約の付帯は必要ない、というのが本音です。

特約を付けるなら

 交通事故に関して特約をつけるのであれば、バイク事故・自動車事故を問わず、弁護士費用保険特約(通称「ベントク」といいます)が非常におすすめです。弁護士費用保険特約があれば、基本的に自己負担なく、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼することができ、多くの場合、弁護士に依頼しない場合よりも高額の賠償額を獲得する可能性があるからです。

 
 弁護士費用保険特約以外にも、事故の相手が無保険車である場合に備えて「無保険車事故傷害特約」などの付帯も検討してよいのですが、通常、バイク保険に加入する場合には、自身が怪我した場合のために人身傷害保険についても契約することが多いので、本特約の需要はそこまで高いものではありません。

バイク事故に備えて契約したい保険

対人・対物賠償責任は基本

 バイクを運転することの特性(危険性)から、バイク事故に備えて、他人を怪我させた場合と自分が怪我をした場合に補償されている対人・対物賠償責任保険への加入を検討することが大切です。 

 バイクの修理費も高額になることがありますし、バイクは自動車以上に事故にあうと全損となりやすいので、修理費が補償される車両保険について契約してもよいのですが、怪我をした、させた場合に比べれば車両保険加入の必要性はそこまで高くありません(人の怪我による賠償責任の方が重大であることは言うまでもないからです)。

 バイクの保険で大切なことは、まずは対人及び対物賠償責任に対しての補償が充実していることです。その上で、自分が怪我して、かつ相手が無保険である場合に備えて人身傷害保険を検討することが基本となります。

弁護士費用保険特約の注意点

 バイク事故に備えて付けておくことがお得な弁護士費用保険特約ですが、注意しておかなければならない点もあります。
 
 弁護士費用保険特約は、弁護士に依頼することで発生する(高額になりがちな)費用を負担してくれる非常に有意性のあるおすすめの保険特約ですが、保険会社の中には、弁護士への報酬をできるだけ抑えようと(保険会社も営利法人なのである程度は仕方ありませんが)、LAC基準という(弁護士からの評判が頗る悪い)報酬基準でのみ弁護士費用を支払おうとする保険会社もあります。

 LAC基準は、これまで高額になりがちであった弁護士報酬を事案に応じた適正な報酬額とするために日弁連が定めた協定であり、この報酬基準ができた沿革をみても、LAC基準自体が悪いというものではありません。
 
 ですが、LAC基準に従って弁護士報酬を支払う限り、保険会社にとって費用が抑えられるのは紛れもない事実です。また、LAC基準を扱う保険会社の中には、この基準を逆手にして後遺障害事案のような明らかな重傷事案でさえ、自賠責保険に請求すれば後遺障害は(自動的に)認定される簡明な事案と扱うものもあります。

 せっかく弁護士費用保険特約をつけても、保険会社から適正な弁護士費用が支払われなければ、支払われなかった弁護士費用の残額は保険加入者自身が負担せざるを得なくなりますので、このような(弁護士報酬を不当に低く抑える)弁護士費用保険特約の運用は、実質的に補償内容を弱くするものであり、見直しが必要といえます。

 近年では、LAC基準を取り扱う保険会社が増えていますので、LAC基準に従って弁護士費用を支払う保険会社の特約を付ける場合には、慎重な検討が必要です。ちなみに、ネットで「日弁連 LAC基準」と入れて検索すると、LAC基準を扱っている保険会社を確認することができます。

バイク事故は弁護士法人いかり法律事務所へ

 本稿では、バイク事故と保険・特約について紹介致しましたが、本稿で紹介した(すすめた)弁護士費用保険特約がなくても、初回の法律相談は1時間無料で承っております(ただし、弁護士費用保険特約に加入されている場合は、保険会社に相談料を請求させて頂いております)。
 
 弁護士法人いかり法律事務所には、大型免許・中型免許を保有する弁護士が在席しており、バイクに詳しい、バイク好きな弁護士も在籍しています。バイク事故について少しでも気になることや、バイク事故について福岡で弁護士をお探しの方は、まずはバイク事故に詳しい福岡の弁護士法人いかり法律事務所へご相談下さい。