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福岡市の交通事故相談に強い弁護士事務所
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投稿日:2021年07月08日
/ 更新日:2023年06月08日
交通事故に遭った被害者は、車両が壊れたことによる損害を加害者に請求することができます。
以下では、自動車事故による物的損害について説明します。
車両が事故によって損傷した場合、修理することが相当なときには、適正な修理費相当額を損害として請求することができます。
修理費相当額は、修理方法、交換部品の価格、工賃等を根拠に算定します。加害者が加入する任意保険会社と交渉するときや裁判では、修理費の証拠として、領収書の他に、修理明細書や見積書を提出します。
また、事故車両の損傷状況が客観的にわかるものとして、写真も有効な証拠になります。あらゆる角度から写真を撮って残しておきましょう。
全損には2種類あります。
一つは、車両の基幹部分に重大な損傷が加わり、修理によって回復不可能な損害が生じた場合の物理的全損と、もう一つは、事故による損傷が修理可能であっても、修理費が事故当時の車両価格及び買替諸費用の合計額を上回る場合の経済的全損です。
全損の場合の損害額は、事故当時の車両価格になります。事故当時の車両価格とは、購入時の価格ではないことに注意が必要です。
では、具体的にどのように事故当時の車両価格を主張していくのでしょうか。
原則として、事故当時の車両価格とは、同一の車種・年式、型、同程度の使用状態・走行距離等の車両を中古車市場において取得するに要する価格(交換価値・再調達価格)になります。
交通事故の実務では、一般的にはオートガイド自動車価格月報(いわゆるレッドブック)を参考にしていますが、インターネット上の中古車販売情報における市場価格を参考とする例もあります。
また、車両の買替えが認められる場合、車両を購入して使用することができる状態にするためには、車両価格だけでなく、諸費用(いわゆる買替諸費用)を必要とするので、事故との間に相当因果関係がある範囲で損害と認められます。
具体的には、自動車取得税、消費税、自動車重量税、検査・登録法定費用、車庫証明法定費用等を指します。
なお、自動車税や自賠責保険料は、未経過分についての還付制度があり、被害者は、事故車両についてのこれらの費用の還付を受けることができるので、損害とは認められません。
自動車を修理したとしても、自動車の機能や外観に欠陥が残った場合、事故当時の車両価格と修理後の車両価格に差が生じます。
これを評価損といい、物損の損害として請求できることがあります。
評価損の種類は、「技術上の評価損」と「取引上の評価損」の2つがあります。
事故によって車両が損傷し、修理しても技術上の限界等から回復できない欠陥が残った場合(走行機能や美観など)を「技術上の評価損」といいます。一方、修理によって欠陥が残存しない場合であっても、中古車市場では、事故歴があるという理由で、いわゆる事故落ち損として売買価格が下落する場合があり、このことを「取引上の評価損」といいます。
取引上の評価損を損害と認めるかについては争いがあるものの、交通事故の実務では、潜在的な欠陥が残っていることに対する市場の評価であると考えて、具体的な事情に応じて、その発生の有無・金額を判断しています。
評価損は、車種、財団法人自動車査定協会の事故減価証明書の査定額、当該事故による事故車両の損傷部位及び状態、初度登録からの期間(例えば2年以内程度) 、走行距離、修理の程度及び修理費を総合考慮して算定されます。
代車料は、事故により損傷した車両の修理又は買替えに要する期間中、事故車両を使用することができないために現実に代車を使用し、それに伴い支出をした費用のことをいいます。代車を使用しなかった場合や自己所有の他の自動車を使用した場合など、代車料を支出しなかった場合には、代車料を損害として認めることはできません。
また、代車料は、被害車両と相応する車種の代車料で足りるものと考えられおり、代車料が認められるのは、現実に修理又は買替えに要した期間ではなく、修理又は買替えに要する相当期間になります。
相当期間は、修理又は買替えに要する期間のほか、事情に応じて見積りその他の交渉をするのに必要な期間が含まれます。
一般論としていえば、その期間は、修理の場合はおおむね2週間程度、買換えの場合は、おおむね1か月程度であるといわれています。
代車料を請求するには、事故車両の車種、利用状況、代車料を支払った領収書等で立証する必要があります。
休車損とは、交通事故により営業用車両が損傷を受けて修理や買換えを要することとなった場合、修理や買換えに必要な期間や事故車両を事業の用に供することはできないことによる利益の喪失のことをいいます。
具体例として、運送会社の貨物自動車、タクシー等の営業車が事故により損傷し、営業ができなかったために損害が生じた場合、その損害は、いわゆる休車損として、相当な修理期間又は買替え期間の範囲内で損害として認められます。
もっとも、休車損は車両を使用することができなかったことによる損害であることから、代車料が認められる場合には休車損は認められません。
休車損の請求には、相当な修理期間又は買替え期間、事故車両によって1日当たり得られるであろう利得額の主張が必要になります。
予備車両(遊休車)があるときは、休車は発生しないので、代替車両を保有していない事実も主張する必要があります。
事故車両によって1日当たり得られるであろう利得額の立証には、被害者の確定申告等で1日当たりの利得を立証し、これを車両の所有台数で除する方法や、1台当たりの売上げから経費を控除し、1日当たりの利益を立証する方法があります。
事故車両の利得額の算出にあたって、当該車両の1日当たりの売上げは、事故前3か月ないし1年の売上実績を基に算出します。
また、経費は、流動経費をはじめとして、稼働しないことによって支払を免れた経費を控除します。
したがって、休車損の算定方法は、以下のようになります。
(事故車両の1日あたりの営業収入-変動経費)×休車日数
物損を理由とする慰謝料は原則として認められません。慰謝料とは、精神的苦痛の補償にあるからです。「モノ」に苦痛は伴わない、という考えです。もっとも、交通事故によって、財産権だけでなく、これとは別個の権利・利益が侵害されたと評価し得るような場合に、例外的に慰謝料が認められます。
物損を算定するには、各費目や算定方法に専門的な知識が必要になります。加えて、物損の交渉の相手は、加害者側の任意保険会社になるため、提示されている金額が適正なものか判断するのが難しくなります。また、交渉するにあたって、心理的負担も大きくなります。
交通事故に遭ったとき、弁護士費用特約保険に加入していれば、弁護士費用は自己の加入している保険会社の負担になりますので、まずは弁護士に相談することをお勧めします。