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投稿日:2022年06月28日
/ 更新日:2023年10月06日

弁護士費用保険特約とは

弁護士費用保険特約の意義と種類

 弁護士費用保険特約とは、被保険者が交通事故によって被った損害について弁護士に相談した場合の法律相談料や弁護士に依頼し発生した着手金、報酬金等弁護士費用、訴訟費用等について一定の範囲内(通常1事故につき300万円が限度)で保険金が支払われる特約のことをいい、損害保険契約に分類されます。

 「弁護士費用保険特約」という名称以外にも「弁護士費用等補償特約」や「弁護士費用等担保特約」などの名称で呼ばれている場合もありますが、その内容は基本的に同一ものです。
 弁護士費用保険特約は、自動車保険のほか、火災保険や傷害保険、医療保険などに特約として附帯されて保険会社などから販売されています。

 弁護士費用保険特約は、保険契約者が一定の保険料を支払うことにより、上記弁護士費用等に対して上限額まで保険金が支払われることになるので、損害の負担を軽減する役割があります。
 また、弁護士費用保険特約を利用することにより、通常、保険の等級が下がることはありません(相談者の方で保険料の増額を心配される方がいまずが、特約の利用により等級が下がることはまずないので、心配は無用です。それでも心配であれば、弁護士への相談前に保険会社に確認しておくと良いでしょう)。

弁護士費用保険特約の内容

被保険者の範囲

 弁護士費用保険特約の保険者(保険事故に対して給付義務のある者、通常保険会社)と保険契約者(保険会社と保険の契約を結び保険料を支払う義務のある者)は、主たる保険の自動車保険の場合と同様です。

 被保険者の範囲は、各保険会社の約款により異なりますが、多くの場合

記名被保険者
記名被保険者の配偶者同居の親族・別居の未婚の子
③被保険自動車の正規の乗車装置又はその装置のある室内に搭乗中の者

が規定されています。

保険事故と扱われる場合

 保険事故とは、自動車事故によって生じた損害に対して保険金の支払い対象となる事故のことをいいます。自動車を所有又は使用、管理することによって生じた事故が対象となります。
 
 保険金支払いの対象となる保険事故といえるためには、「急激かつ偶然な外来の事故」であることが要件となります。
 「急激かつ偶然な外来の事故」とは、突発的に発生し、予見することが困難な出来事であって、被保険者の身体の外部から生じた事故のことをいいます。交通事故以外にも運動中の打撲や骨折、転倒、他人の飼い犬に咬まれての受傷、 火災・爆発事故などがあたります。
 
 他方、保険事故の発生に関して、被保険者に故意又は重大な過失によって生じた損害無免許運転・酒気帯び運転により運転者本人に生じた損害、地震・噴火またはこれらによる津波など天災事変によって生じた損害などについては保険事故と扱われず保険金が支払われません

LAC基準とは

 トラブルに遭って、弁護士に法律相談や交渉、訴訟を依頼しようとしても、弁護士費用がいくらかかるのか分からず、高額な費用を請求されるのではないかと不安を抱え弁護士に依頼することを躊躇される方もいるかもしれません。

 このような問題を解決するため、日本弁護士連合会(日弁連)は、法律相談料や弁護士費用等が保険金として支払われる弁護士費用保険(弁護士費用保険特約のことです。)を発足させ、この制度の運営と発展のために日弁連LAC(日弁連リーガルアクセスセンター)を設置し、弁護士費用の保険金支払基準(LAC基準)を定めました。
 LAC基準は、弁護士費用の算定方法を定めているため、誰でも弁護士費用がおよそいくらかかるのかを判断することができるようになりました。
 
 弁護士費用保険の運用において、協定保険会社(日弁連と協定を締結している保険会社や共済協同組合)と弁護士は、LAC基準を尊重することになっているため、弁護士はLAC基準に沿って弁護士費用を請求し、協定保険会社は同基準に沿って弁護士費用を支払うという流れができることになりました。また、協定保険会社が増加傾向にあり、弁護士費用保険特約の認知度も高まってきたことと相まって、被保険者も弁護士に相談、依頼をしやすくなりました。

 他方で、LAC基準に沿った弁護士費用の請求は義務ではなく、依頼者と弁護士間で合意があれば、弁護士はLAC基準以上の報酬を協定保険会社に請求することができるため、弁護士費用の請求に際して協定保険会社との間でトラブルが生じるケースがあります。
 仮に、LAC基準を超える弁護士費用を請求して協定保険会社から支払いがなかった場合、支払いがなかった差額分については依頼者が負担しなければならなくなる可能性があるからです。そのため、弁護士費用保険特約を利用する場合には、相談や依頼をした際の弁護士費用がLAC基準に沿ったものであるのかを確認しておくべきですが、最終的に弁護士費用の一部が依頼者の負担となるリスクは、弁護士の方から依頼者へ十分に説明しておくことが必要だといえるでしょう。

 なお、日弁連と協定を結んでいる保険会社や共済はこちら(日弁連のホームページ)からご確認頂けます。

弁護士費用保険特約に対応している保険会社

 LAC基準を定めた日弁連と協定を結んでいる保険会社や共済協同組合は近年増加傾向にあります。
 このような流れを受けて、現在では、日弁連と協定を結んでいる保険会社や共同共済組合だけでなく、損害保険会社(外国損保も含みます。)の多くが弁護士費用保険特約の販売を行っています

東京海上日動火災保険(東海・東京海上)の弁護士費用保険特約

 東京海上日動火災保険株式会社(以下「東京海上」といいます。)は、弁護士費用保険特約を販売している保険会社としてはとても人気があり、実際に、東京海上の弁護士費用保険特約を利用して弁護士にご相談、ご依頼する方も沢山いらっしゃいます。東京海上の弁護士費用保険特約は認知度が高く、利用者の人気も高いですが、日弁連と協定を結んでいる保険会社ではありません(非協定保険会社が「良くない」ということでは全くありません。後々の弁護士報酬を巡るトラブルを回避できる点で、むしろ依頼者にとっても弁護士にとっても「かなり良い」とさえいえます)。
 
 東京海上は、非協定保険会社ですが、弁護士費用保険特約の内容は、他社の特約と同様のものとなっており、日常生活での事故や契約の車の事故で相手方に法律上の損害賠償請求をする場合には、1つの事故について補償を受けられる方1名あたり、300万円を限度に保険金の支払が受けられます(特約の内容について詳しく知りたい方は直接保険会社にお尋ねください)。
 
 私見となりますが、東京海上の特徴は、弁護士費用の請求に際してトラブルの発生が少ない点が挙げられると思います。
 東京海上は日弁連と協定していない非協定保険会社ですが、東京海上の場合、LAC基準以上の弁護士費用を請求しても、特約の上限額までなら余り揉めることなく弁護士費用を支払うことが多いからです。

その他の損保会社の弁護士費用保険特約

 東京海上のほか、弁護士費用保険特約を利用する会社として、認知度が高く、利用者が多いのは、「損害保険ジャパン株式会社」や「あいおいニッセイ同和損害保険株式会社」、「三井住友海上火災保険株式会社」などが挙げられます。これらの保険会社は、日弁連と協定している会社であるため、弁護士費用の請求の際には、LAC基準に沿った請求を行うよう求められます。
 
 事案によっても異なり一概には言えないのですが、LAC基準によると、治療期間が長期間に及ぶ事案や後遺障害等級が認められるような重篤な障害が遺った事案など重大な事案でない限り、簡明な事案として扱われる傾向にあるため、経済的利益が小さくなり、経済的利益の割合で算定される弁護士費用も少額になりやすくなります。
 そのため、依頼者と弁護士間で合意した委任契約に基づき、LAC基準を超えた弁護士費用を請求すると、保険会社との間でトラブルが生じやすくなるようです。

弁護士法人いかり法律事務所は、弁護士費用保険特約(弁特)に対応しています。

 弁護士費用の内容は、依頼者と弁護士との間で合意があれば自由に定めることができますが、弁護士費用をLAC基準により算定して協定保険会社に請求した場合、弁護士報酬が少額となるケースが多いことなどから、弁護士費用保険特約の利用をお断りする法律事務所もあります

 弁護士費用保険特約を利用することにより、ご相談者やご依頼者の方が弁護士費用を負担することはほとんどなくなりますので、安心してご相談・ご依頼頂けるよう、弁護士法人いかり法律事務所では、弁護士費用保険特約を利用してのご相談やご依頼を積極的に承っております。また、ご希望があれば、初回相談時に弁護士費用のお見積りも行っております。
 弁護士費用や弁護士保険特約等について、少しでも気になることがありましたら、ご遠慮なくお尋ねください。