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投稿日:2021年06月17日
/ 更新日:2023年10月17日

過失割合とは

 過失割合とは、交通事故が発生した原因が交通事故の当事者のどちら側にどの程度あるのかを示す数値のことをいいます。
 
 例えば、直進同士の出会い頭の事案で、信号機により交通整理の行われている交差点では、追突された側(青信号)と追突した側(赤信号)の過失割合は0:100ですが、黄色信号と赤信号で進行した場合の過失割合は20:80とされています。

 過失割合に納得できない場合、事故状況の確認や実況見分調書など客観的な形跡を確認することが重要です。
 以下、過失割合の決定方法について詳しく解説します。

過失相殺とは

 交通事故に遭った時、被害者は、加害者に対して損害賠償請求を求めます。
 その際、被害者が任意保険に加入していれば、被害者は加害者の任意保険会社と賠償額について交渉をすることになります。  

 その時、加害者側の任意保険会社は交通事故の事故態様から「被害者」の過失割合について主張する時があります。
 このように、加害者の落ち度だけでなく、被害者の事故原因割合について考慮して、損害額を決定することを過失相殺と言います。 

 例えば、交通事故によって被害者に100万円の損害が発生したとします。
 もっとも、この時、被害者の方にも交通事故の発生について10%の過失割合が認められるとします。この場合、交通事故発生の当事者の過失割合は、加害者:被害者=90:10になり、被害者の請求できる金額は90万円となります。

過失割合の基準

 それでは、いったいどのようにして過失割合を決めるのでしょうか。 

 交通事故の実務では、過失割合について、東京地裁民事交通訴訟研究会編『民事交通訴訟における過失相殺の認定基準〔全訂5版〕』(別冊判例タイムス38号、2014)(以下「緑の本」と言います。)を基準にします。この緑の本には、338個の交通事故の事故態様の類型が記載されており、それぞれの類型ごとに加害者と被害者の過失の割合が記載されていいます。 

 また、類型ごとに、加害者と被害者の過失を修正する要素修正割合が記載されています。
 修正要素としては、以下のようなものがあります。

① 夜間
② 直前直後横断、佇立、後退、急な飛び出し、ふらふら歩き
③ 住宅街、商店街等(人の横断、通行が多いことが想定される場合)
④ 集団横断、通行(集団登下校など)
⑤ 著しい過失(著しい脇見運転、ハンドル・ブレーキ操作不適切、携帯電話使用、酒気帯び運転等)
⑥ 重過失(酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、時速30㎞以上の速度違反、過労・病気・薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある場合等)

 緑の本に記載のない態様の事故については、基本に立ち戻り、各種交通法規の定めや、一般に交通ルールとして理解されているところ等を考慮し、個別の事案の事実関係に即して、適切な過失相殺等の認定判断を行うことになります。

過失割合の立証方法

 交通事故に遭った時、被害者は、加害者の任意保険会社と交通事故の過失割合について、交渉をしていくことになります。
 
 では、どのようにして、過失割合の主張をしていくのでしょうか。
 過失割合を主張するためには、前述のとおり、事故態様について明らかにしていく必要があります。

写真及び図面の利用

 事故後の車両の写真は、自動車が他の自動車に衝突した事案において、自動車の破損状況を直截に認定し得る客観的資料であることから、事故態様を推測する手がかりとなります。

 また、事故現場の写真が証拠として提出されると、事故現場の道路の状況を理解しやすくなります。
 写真のほかに、ドライブレコーダーがあれば、当事者間の車の動きを客観的に知ることができるので、より有用な手掛かりとなります。

刑事記録の利用

 また、刑事事件記録等を参考として事故現場の地図、加害車・被害車の位置・距離関係等を表示した図面、事故現場を撮影した写真等を用いることも有用です。

調査会社の利用

 調査会社とは、事故原因を客観的・物理的な観点から究明する第三者調査機関と言われています。
 そして調査員は、事故現場の調査、交通事故の当事者からの聞き取り、警察からの聞き取りや、事故現場のあらゆる角度から事故現場の写真を撮影し、道幅、信号サイクルなどを確認し、事故の調査をします。その後、調査の結果を報告書として作成します。

 交通事故の被害者が調査会社に調査を依頼する場合、調査費用が発生します。
 もっとも、弁護士費用特約保険に加入している場合には、その費用は自己の保険会社が負担してくれることになります。

素因減額

素因減額とは

 過失相殺と似た話で、「素因減額」という議論があります。
 素因減額とは、身体に発生した損害について、被害者が有していた事由が損害の発生及び拡大に影響している場合に、賠償する金額を定めるに当たり、当該事由を考慮することをいいます。

被害者が有していた事由とは

 実務では、被害者が有していた事由について、以下のように考えています。 

① 事故の前から被害者の疾患が損害の発生に寄与していることが明白であるときには、当該疾患の損害額を決定するにあたり考慮します。 
② 加齢による身体の変化については、原則として、損害額を決定するにあたり考慮しません。 
③ 疾患ではないが、身体的特徴(例えば、肥満など)についても原則として考慮しません。
  しかし、その身体的特徴が、疾患に比肩すべきものであり、かつ、日常生活において通常人に比べてより慎重な行動をとることが求められる場合(極端な肥満による転倒など)には、損害額を決定するにあたり考慮する事由になります。

さいごに

 過失相殺において、加害者と被害者の過失割合を決定するには、法的な調査と事実の調査が重要になっていきます。どちらの調査も容易なものではないため、まずは、弁護士への相談をお勧めします。