コラム

交通事故における治療費の支払の打ち切りに対して延長を求める方法

被害者の方の対応

交通事故の治療を続けているうちに、相手方の任意保険会社から治療費の打ち切り連絡がくることがあります。しかし、治療費の打ち切りを打診されたからといって、そのまま受け入れる義務はありません。

被害者の方の対応としては以下の4つがあります。

  1. 保険会社に治療費の支払い継続を求める
  2. 被害者が自費で治療を続ける
  3. 治療の必要性を医師に相談する
  4. 治療をやめて症状固定として後遺障害認定申請をする

具体的な対応方法も含めて説明していきます。最後までしっかりと目を通し、交通事故の賠償問題で損をしないようにしましょう。

治療費の支払の打ち切りとは

治療費の打ち切りとは、相手方の任意保険会社が一括対応による治療費の支払いを中断することです。けがの状態にもよりますが、保険会社は被害者に対して交通事故から3か月~6か月ほどで症状固定になったとして、治療費の打ち切りを行い、治療をやめるように打診をしてきます。症状固定とは、医学上一般的に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待しえない状態、つまりこれ以上治療をしても症状の改善が見込めない状態に達したことをいいます。つまり、これ以上治る見込みのない症状固定の状態となったら、治療費は支払われなくなります。

治療費を打ち切られたとしても、治療自体は続けることはできます。しかし、健康保険を使うことになるので、被害者は治療費の3割を負担することになります。治療の必要性などが認められれば最終的には加害者保険会社に請求できます。

交通事故の治療費は誰が支払うのか

加害者(相手方)の任意保険会社

一般的に、交通事故に遭いけがをしたとき、入院や通院をしたときにかかる治療費は、加害者が加入している任意保険会社が負担してくれます。被害者に落ち度がない事案であれば保険会社が支払いをすることがほとんどです。ただ、一方で被害者の落ち度があるときは、その程度によっては、加害者保険会社は治療費を支払ってくれないことがあります。

加害者(相手方)の自賠責保険

加害者の自賠責保険に治療費を支払ってもらうこともできます。自賠責保険では被害者の落ち度が大きくない限り120万円の範囲で治療が可能です。ただ、ほとんどのケースでは健康保険を利用しつつも、その負担部分を自費で立て替える必要が出てきます。

自分の任意保険会社

そこで、被害者の落ち度がある事案では、ご自身の保険契約に付帯している人身傷害保険特約を利用することを検討するのもよいと思います。

治療はいつまで続けることができるか

交通事故でけがをした場合、治療の必要性がある限り、治療を継続していいともいます。しかし、交通事故自体の重大さによって、現実には、加害者の治療費の負担の下に治療を継続できる期間は限定されてしまいます。

つまり、加害者に治療費を負担してもらいながら治療を継続できるのは、治療の必要性と相当性があるといえる場合になります。

「症状固定」となったら、治療の必要性がないということになり、治療は終了となります。

治療の打ち切り・治療費の支払打ち切りの理由

まだ症状が残っているにもかかわらず、治療の打ち切りを打診されるのは何故でしょうか。その背景には、任意保険会社が「これぐらいのケガなら、この時期くらいで症状固定だろう」や「これ以上は治療費を支払う必要がない」と判断していることがあげられます。

では、治療費の打ち切りがなぜ起こるのか治療の打ち切りの理由について整理してみます。

保険会社は営利企業である(治療打ち切りの理由①)

交通事故の被害者としては、症状がなくならない限り、加害者やその保険会社に治療費を負担してもらいたいと考えるのは当然のことです。

一方で加害者やその保険会社としては、治療費を含む損害賠償金額は少ない方がいいのです。そして、後遺障害が認定されると損害賠償金額が大幅に増えるため、保険会社はできる限りそれを避けたいと考えています。保険会社は、公益法人ではなく、ほとんどが株式会社形態をとった営利企業なのです。

また、保険会社は、被害者本人でもないですし、その治療にあたっている医師でもないので、治療の必要性がわからないということも治療打ち切りを求める理由の一つといえます。

これらの理由から治療の打ち切りが行われていると考えられます。

6ヶ月以内なら後遺障害は認定されない(治療の打ち切りの理由②)

交通事故の後遺障害は、明確な画像所見などがあれば別ですが、頸椎捻挫などのいわゆるむち打ちのケースだと、6か月以上の通院実績がなければ後遺障害の認定はされません。

そのため、保険会社によっては、6か月以上の通院継続によって後遺障害が認定されないように、6か月以内で治療を終わらせようと働きかけてきます。

自賠責保険の範囲120万円を超える(治療の打ち切りの理由③)

交通事故の保険には、任意保険以外に自賠責保険があることは多くの方がご存知だと思います。その自賠責保険は、簡単に言えば、120万円までの治療費などは負担してくれます。単純に言い換えれば、その範囲内であれば、任意保険会社は全く金銭的な負担が発生しないのです。

ですので、治療費などの損害賠償金を考慮して、120万円の範囲を超えそうになったタイミングで保険会社は、治療の打ち切り、治療費の支払いを止めようとします。

治療打ち切り打診にどのように対応するか

被害者がまだ症状固定を迎えていない場合、症状固定の予定時期まで治療費の支払い期間を延ばすことが可能です。

症状固定時期を判断できるのは主治医です。相手方の任意保険会社が勝手に症状固定を決めることはできません。

そのため、主治医から「治療を継続する必要があること」「症状とケガに因果関係があること」を相手方の任意保険会社に説明してもらえれば、治療費打ち切りを撤回される可能性があります。

治療の延長の交渉(対応方法①)

交通事故でけがをした場合の被害者の治療費は加害者保険会社が支払ってくれるのですが、その保険会社の治療の打ち切りを打診してくることがあります。このようなときはどのように対応すればよいのかです。

まずは、治療費の支払いを継続・延長してもらうために、保険会社と交渉することです。

具体的には、保険会社に対して痛みが残っていて治療を延長する必要性があることを伝えます。また治療によって改善傾向にあることを訴えます。つまり、症状固定でないことを主張することです。ただ、「まだ痛いんです」と主張するだけでは、保険会社も治療費の支払を延長してくれません。

そこでさらに、被害者の通院している病院の担当医に治療継続の必要性を示した診断書を作成してもらい保険会社に提出するということも検討すべきです。

治療費の支払いが打ち切られたとき(対応方法②)

まだ痛みなどの症状が残っていて治療をしたいのに、保険会社が治療費の支払いを今月いっぱいで終わりにしますと言って、治療費の支払いを打ち切ってくることがあります。病院が保険会社が治療終了と言っているから治療は終わりですと言ってくることもあります。

このようなときでも、医師とよく相談して、治療継続の必要性があるという場合には、診断書を書いてもらうほか、健康保険を利用して治療を継続することができます。

軽微な交通事故での治療打ち切り(対応方法③)

交通事故でもその程度は様々で、物的損害額が小さいような軽微な交通事故の場合、保険会社は1~3か月程度で治療の打ち切りの打診をしてくることがあります。

症状がほとんど軽快している場合は治療を終了すべきで、いたずらに治療を延長すべきではありません。このようなときは、治療の必要性を真摯に検討し、医師に相談して、医師の判断に従うのも一つです。

症状が残っており、医師が治療継続に前向きな意見をくれる場合は、保険会社に相談し、それでもだめなら健康保険で通院をすることです。

治療を打ち切って後遺障害を申請しましょうと言われたら(対応方法④)

交通事故の後遺障害は、明確な画像所見などがあれば別ですが、頸椎捻挫などのいわゆるむち打ちのケースだと、6か月以上の通院実績がなければ後遺障害の認定はされません。このことは当然保険会社とその担当者は知っています。

それにもかかわらず、交通事故発生から3~5か月くらいのタイミングで、保険会社は、「痛みがまだ残っているということであれば後遺障害の申請をしましょう。そのためには治療を終了しなければなりません。」「認定されればそのお金で治療をすればいい」などといった案内をしています。

これは明らかに誤った案内です。治療を打ち切っても後遺障害の認定はされませんので、交通事故の被害者としては注意が必要です。

痛みなどの症状が残っているときは、少なくとも6か月は治療を継続すべきということになります。

まとめ

少なくとも保険会社は事故直後の治療費は負担してくれるので、交通事故に遭ったらすぐに病院に行き、気になる症状は早い段階ですべて医師に伝えておきましょう。もっとも、時間差で症状が現れる場合もあるので、その都度医師に症状を伝えることが大切です。

症状固定は、いつかは来てしまうものではあるものの、どのタイミングをその時期と判断するのかは非常に難しいです。

加害者側の保険会社の担当者が症状固定にすべきと頑なに主張する場合は、弁護士が間に入って、治療の必要性を伝えたり、治療の必要性を裏付ける資料を提出したりして交渉することによって、治療費の支払いを継続してもらうことができる場合もありますので、是非ご相談ください。